499.jpg
セクハラ撲滅活動の弁護士、支援した女性と性行為めぐり和解「真意に反していた」解決金支払い
2025年08月01日 16時34分
#セクハラ #エントラップメント型ハラスメント

演劇界や映画界のハラスメント撲滅に取り組んできた弁護士から、立場を利用して性的関係を強要されたとして、舞台俳優の女性が弁護士を訴えていた裁判が東京地裁で和解した。和解成立は5月20日付。女性の代理人が公表した。

和解内容は、被告の馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)弁護士が、原告の知乃さんに対して謝罪し、解決金を支払うというもの。弁護士ドットコムニュースは、馬奈木弁護士にコメントを求めたが、期限までに回答はなかった。

演劇界や映画界のハラスメント撲滅に取り組んできた弁護士から、立場を利用して性的関係を強要されたとして、舞台俳優の女性が弁護士を訴えていた裁判が東京地裁で和解した。和解成立は5月20日付。女性の代理人が公表した。

和解内容は、被告の馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)弁護士が、原告の知乃さんに対して謝罪し、解決金を支払うというもの。弁護士ドットコムニュースは、馬奈木弁護士にコメントを求めたが、期限までに回答はなかった。

●「女の子たちにあなたのせいじゃないと言いたい」

知乃さんの代理人によると、和解条項には、解決金の支払いに加え、馬奈木弁護士が「知乃さんの言動を誤解し、知乃さんの真意に反して性的関係を持ったことを認め、謝罪すること」との内容が盛り込まれたという。

知乃さんは「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」の代表として活動する中で、民事訴訟の代理人を馬奈木弁護士に依頼。しかし、望まない性的関係を求められたとして、2023年3月に慰謝料1100万円を求めて提訴していた。

知乃さん側は、馬奈木弁護士による「エントラップメント型ハラスメント」だと主張し、注目を集めた。

エントラップメントとは、「罠にはめる」という意味で、精神的・物理的に徐々に逃げ道をふさいでいき、明確な暴力がなくとも逃げられない状況に追い込み性行為を強要するというものとされる。

知乃さんは、代理人を通じて、次のようにコメントしている。

「私の事案の報道で初めて『エントラップメント型ハラスメント』という言葉を知る女の子がいると思います。『エントラップメント型』と名前がつくハラスメントがこの世にあることを頭の片隅に入れておいてほしい。これが、私が一番強調したいことです。

エントラップメント型ハラスメントの被害者は、意志に反する性的関係に応じてしまったことを自分のせいだと責めてしまうことが多いと思います。でも、『あなたのせいじゃないよ』ってことばかりです。目を覚ましてほしい。それはハラスメントだよ、と何度でも言いたい」(一部抜粋)

●「法律家全体で性暴力の認識アップデートを」

知乃さんの代理人3人も連名で次のようにコメントした。

「人間関係に乗じたハラスメントに苦しむ方々は少なくありません。知乃さんは、自身の闘いがそのような方々を少しでも励まし、尊厳を守るための行動を応援することを願って声を上げました。声を上げることは意味があるという知乃さんのメッセージが少しでも多くの方に届くことを願います」

また、大阪地検検事正だった男性が部下の女性検事への準強制性交罪に問われている事件や、大分県の女性弁護士が、弁護士会会長もつとめた男性弁護士からの性的関係強要に苦しみ自死した事件(民事訴訟で遺族が勝訴)などにも言及。

「本件は、弁護士含む法律家にも、他人事ではない教訓を残し、業界のありようを問う性質のものと考えています」「法律家であるために、性差別、性暴力に対する法律家全体の認識を更にアップデートし、性差別や性暴力を生む構造について深い知見を身につけることの必要性を強調したいと思います」

●ハラスメント撲滅を掲げていた馬奈木弁護士

弁護士ドットコムニュースは、馬奈木弁護士に取材を申し入れたが、期限までに回答はなかった。

知乃さんが提訴するまで、馬奈木弁護士はドキュメンタリー映画の制作にも関わるなど、演劇・映画分野を支える活動をおこなっていた。また、ハラスメント撲滅を掲げた取り組みにも関与していた。

過去の取材では、次のように話していた。

「ハラスメントを再び起こさないために、弁護士はもっと予防に力を入れたほうがいいと思っています。弁護士には持てるスキルや知識があり、それを有効的に使える場があります」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る